ふと自転車で小学校の前を通れば、運動会の練習風景。
もう、そんな季節なんだよなぁ。
自分の事を思い出してみると、高校はダラダラ翌日の休みを目指すだけだった、中学は男同士で張りつめたマジの戦いだった、そんな中、ただワンシーンだけ、とにかく小学校の時の記憶が色濃く残ってる。
みなさんも、入場パレードがあったのを覚えていますか?
その時、朝礼台の上でバトンをふり指揮をとる女の子が居ませんでしたか?

小学生の僕らの恋愛感といったら、二人で遊んで手をつなぐ事が完成型で、キスすら遠い世界の話のようなもの。
あの頃の男女関係は残酷なもので、バレンタインに忙しくなる様な一握りの人気者とそれ以外にはっきり別れてしまうもの、大人になるにつれ広がってゆくのだけどそれはまた別の話。
そんな頃に僕は、初恋と呼ぶにはあまりに単純な、女の子の想いを気にする事を初めて確かに意識した、そういった想いを抱いていた。

学級委員の投票になったとき、その娘を含めて三人の争いになって、いざ口頭で投票する瞬間に、僕は素直にその娘の名前を言う事が出来なくて、ちょっと寝てた振りをしながら
「えっ、一番多いやつでいいよ」
なんて言ってしまって逆に「誰だよー」「名前いわねえとわかんねえよー」なんてみんなにからかわれたのを覚えてる。

そんなある日の給食の時間に事件は起きた。

「木本さんがこだま君が原田さんの事好きなこと言っちゃったって!」

いつもと同じ給食風景のなかに突如飛び出した根も葉もある噂話。
1人がクラスの大半に聞こえるような声でこの話をしてしまい、クラスは子供ながらの暗黙の了解が表沙汰になり、微妙に浮ついた空気に包まれた。
その時、あの娘は、困ったような顔をしていた気がする。あやふやな記憶だけど。
そして、僕のリアクションが待たれた。
僕は、、、
泣いてしまった。
何もする事ができずに、ついには自分の机の下に逃げ込み泣き出してしまった。
そのまま給食の時間中そこで泣いてた、昼休みの間も、後戻りできない恥ずかしさからか、毅然としていられない幼さからか、その後の掃除の時間のために後ろに固められた机の下に隠れたままで、目を赤くしてすわりこんでいた。

そんな時原田さんが僕の元にやってきた、そして彼女は言った。
「どうしたの?」
それだけ言い残して彼女は教室を出て行った。

この時もこれだけ、その後も何が合ったわけじゃない。肩透かしの様な話かもしれない。でも、小学生ってこんなもんだったりで、そして僕は私立の中学校へ通いだし、あの街を出て行った。
運動会の景色を見ると今でも、そんなあの娘が朝礼台の上でバトンをふっていた、その景色を思い出す。他の事は、騎馬戦やったことくらいしか覚えてないのに。
そんな秋の終わりが見えてきて、もうすぐ冬になる、また何かのきっかけで、想い出に襲われるのだろう。

自分の最低限の環境を守ろうとして、想い出にすがり、そこから動かないのが間違いなのは分かってる。